爪から心を明るく~ネイリスト蔵田清乃さん

ネイリストの蔵田清乃さんは、21年7月に大阪・心斎橋でネイルサロンをオープン(今年の夏からはまつ毛ケアなどを行うアイリストが加わって、2人でサロン『好日』をスタート)。子供の頃から絵を描くのが好きだったという蔵田さんが最初にネイリストを目指したきっかけや、独立してサロンを開こうと思った経緯を話してもらいました!

――まず、そもそも絵を描くことはいつ頃からされていたんですか? 小さい頃から好きだったんでしょうか?

蔵田 絵は物心ついた時から大好きでよく描いていました。紙とペンがあったらどこでも楽しめるタイプの子供でしたね。小学生のとき、配られるプリントの裏でひたすら遊んでいました、休み時間も授業中も(笑)。グリム童話の物語を参考に絵本を作ったり、将来いつか一人暮らししたらこんなお家に住みたいとか、空想するのも大好きで。美術大学ではなかったのですが、進学しても絵は趣味でずっと描いていました。ネイリストになってからは絵を描く欲求がお仕事で満たされて、こんなに楽しい仕事があっていいのか~?と思いながら、ありがたく毎日楽しく描かせていただいてます。

――絵を描くのが好きになったきっかけの作家さん、あるいは絵本などの作品などはありますか?

蔵田 それがあんまりなくて……しいて言うなら『ちびまる子ちゃん』はずっと観てました!!!

――なるほど。ちなみに、大学卒業後いわゆる就職ではなく、ネイリストという職人の道を選ばれた理由は何だったんでしょうか?

蔵田 普通の4年制の大学だったんですけど、昔から絵を描くことが大好きだったこともあり、在学中も友人と共同制作でZINEや絵本を作ったり、パン教室のレシピを描いたりしていました。絵を描くことと同じくらいプレゼントを贈ることも大好きで……そのプレゼントというのも、お菓子も焼いたり、思い出アルバムを作ったり、手作りすることが多く、いつも“喜んでもらえるかな、笑ってもらえるかな”という気持ちで作っている時間が大好きでした。ネイリストだったら絵を描くことも、人に喜んでもらえることも同時に叶って、“そんな楽しい仕事は最高なのでは? もしかしたら向いてるかも!”と思ってネイリストを目指しました。

――私もネイルを施してもらっていていつも、蔵田さんの描写の細かさと丁寧さに感心するのですが。色遣いもすごく配慮されている印象があって。

蔵田 ありがとうございます。うれしいです! 

――ネイルをする上で拘っているデザイン面、技術面のポイントをそれぞれ教えてもらえたらなと思いまして。

蔵田 まずデザイン面で、いちばん大切なことは“お客さんがご機嫌でいられること”なので、お客さんの“好き”を知るためにたくさん質問させていただきます。ひとりひとり全然好みが違うので、鬱陶しいくらい確認を挟みます。色は濃すぎないか、パーツは派手すぎないか、もちろん私の拘りもあるのでそれもお伝えしながら決めていきます。“好きそう”“似合いそう”という感覚は大切にしたいなあと思います。

――お客さんに寄り添いながらも、蔵田さんが思うお客さんの魅力を活かすデザインを心がけてらっしゃるんですね。では、技術面での拘りはどうでしょうか?

蔵田 技術面は、持ちが良く、お爪に優しい施術を心掛けています。“ネイルがすぐに取れてしまいやすい”“浮いてきて髪の毛がひっかかる”というお声をよく聞きます。そんな違和感はないように、日常に馴染むようにしっかりケアして持ちの良いネイルを心掛けます。また、“ネイルをして爪が薄くなった”というお声もよく聞きます。爪が薄くなると爪が割れたり、欠けたり、指に力をいれづらくなります。日常生活にも支障が出てしまうので、そんな悲しいことがないようにネイルオフする時は優しく、ゆっくりオフするように心掛けています。また、付け替えの時も全て除去して爪を丸裸にするのではなく、マシーンでベースを1層だけ残してその上からジェルを乗せる自爪への負担が少ない施術方法を採用しています。そうするとアセトン(ネイルをオフする液体。普段、道路の白い線を消すのに使われるくらい刺激が強いもの)を使わずに済むのでお肌にも優しく良いことづくしです!

――ちなみに、接客面での拘りポイントなどはありますか?

蔵田 接客について意識していることは、居心地よく過ごしてもらえるようにその方がどう過ごしたいかはちゃんと汲み取りたいなあと思います。おしゃべりしたり、ぼーっとしたり、映画を観たり、みなさん好きな過ごし方があるのでなるべくそのまま過ごしてもらえるように。おしゃべりする時、t私はわりと素のままで、友達と話してる時とあまり変わらないと思います。ただ、素は素なんですけど、あまり砕けすぎないように言葉遣いはなるべく気をつけたいと思います。あと、私はもともと話し方が柔らかくフワフワとしているので、それはそれで良いことなんですけど、“頼りない”という印象を持たれやすい気がして、なるべくハキハキ話すように気をつけています。

――ネイリストさんの中には独立せずに働かれている方も多くいるかと思うのですが。その中で、自分のお店を持ちたいと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

蔵田 以前はサロンで勤務していたのですが、勤務3年目くらいで独立を考えるようになりました。お客さんがもっとくつろげるようなこじんまりとした空間で、好きな映画を観ながら、おしゃべりしながら、ココアなんかいれちゃったりして、ほっこりサロンができたら~なんて、ずっと脳内妄想していました(笑)。私も“好きな時間に、お客さんのご要望があらばお店に出る”みたいな自由な働き方ができたら、ネイル以外にも好きなバイトをしたり、他の勉強したり、人生に幅ができるかなあとなんとなく考えたりし始めたのがきっかけです。

――では、ネイリストをされていて“やっていて良かったなー!”と思う瞬間はどのような時ですか?

蔵田 ネイルを施して「これで明日からも頑張れます」「可愛いすぎて、ずっと観ちゃいます」とお客さんに言われた時ですね。ネイルが日々の活力になってるなんて、そんなに嬉しいことはないです。お客さんがくれるあたたかい言葉が間違いなく、私の日々の活力になっています。

――ネイルサロンを開く際、いちばん大変だったところ、不安だったところを教えてもらえますか?

蔵田 生きていけるのかなあという心の不安です(涙)。ありのまま話すと、私は本当にビビリで不安症なので、初期費用が使ったこともないほどの大金で、工事代を払った時に“ええええええ! こんなにお金かかるん? 大丈夫? 生きていける?”と。用意するものも細々と意外に多く、とにかく不安でいっぱいでしたが、周りの人たち、お客さんに助けてもらい励ましてもらいながらなんとかオープンすることができました。“お客さんに喜んでもらえるように”……もう、それだけを考えて、やるしかないぞ~!と切り替えて、それでも不安で泣きながら全力で走ってました。今でこそ「自分でお店するなんてかっこいい!」なんて褒めてもらえたりしますが、こんなもんです。全然かっこよくないです(笑)。

――いえいえ、不安の中でもチャレンジして奔走されている姿は本当にカッコいいと思います! ちなみにその大変だったところ、不安だったところはお店を開店したことによって解消されましたか? 

蔵田 不安が完璧に解消されることはないですが、かなり落ち着きました。おかげさまで“とりあえず生きてはいけそう!”という気持ちになりましたね。

――じゃあ、開店してみて、思っていたのと違うという面はありました?

蔵田 思ってたより、1人がさみしい!ということですかね。何かこぼした時にひとりでコツコツ拾う場面はなんとも寂しいです(笑)。今年になってアイリストの女の子も加わってくれて『好日』という名前で新たなスタートを切ったんですが、仲間が増えて楽しくさせていただいてます!

――では最後に、アイリストさんと共にスタートした“好日”で今後こうなっていきたい!という目標などがあったら教えてください!

蔵田 今の時点(22年12月)で5カ月経ちましたが、毎日まなみちゃん(アイリストさんの名前)のお客さんに真摯に向き合う姿に刺激をもらっていて、ひとりでお店をしている頃よりも“私も頑張ろう、こうしよう”と思える瞬間が増えて、一緒にお店ができて良かったなあと思います。特に目標とかはないのですが、これからも楽しく、あたたかい気持ちで毎日お客様に“ご機嫌”をお届けできるように頑張りたいです!

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